アナル・パンデミック - 感染 -

 
(照明がついた後、舞台袖から出てくる)
 
みなさん、今日はお集りいただきありがとうございます。
ジャーナリストの木下と言います。
 
今、大変なことになっていますね。
ネットで話題になっている、あの病気です。
みなさん、病気にかかった人、見ましたか?
 
福岡、名古屋、そして東京のほうでも大流行していて、
大阪しか残っていないんです。
 
でもあの病気、大阪だと実際に見たことある人、少ないでしょうね。
ぼくはたくさん見てきました。
いろんなところで、病気でたおれていく人たちを…
 
YouTube の動画、消される前に見ました? あのトイレの動画です。
あれ、ぼくが撮ったんです。
 
最初は映画かなんかのプロモーションと思ったのか、
誰も相手にしてくれませんでした。
 
でも全国いろんなところで、あの病気の危険性ずっとを訴え続けてきました。
その甲斐あってか、なんとか今みたいに話を聞いてくれる人が集まるようになりました。
 
みなさんもここで聞いたことを広めてください。
大阪のみなさんしか残っていないんです。
 
札幌や仙台も、もうダメらしいです
元気なのは大阪だけ、
大阪がこの日本を、世界を救う最後の希望なんです。
 
みなさんにまず覚えておいてほしいのは、
「ウォシュレットとシャワートイレを見たら、たたき壊す」
もう一度言います。
「TOTO のウォシュレットとINAX のシャワートイレは破壊」
いいですか。
「TOTO、INAX 破壊」
です。
 
あー、いきなりこんなこと言われてもわけがわからないですよね。
まず、あの病気について説明しましょう。
 
ぼくが取材を続けてたどりついた真実。
これを知っているのはおそらく民間人ではぼくだけでしょう。
そう。政府は隠しているんです。
 
さて、何を隠しているのか…
 
まず、あの病気は福岡県北九州市で始まりました。そう、あのYouTube の動画です。
 
(怪談を話す稲川淳二のような語り口で話し始める)
 
小倉駅から歩いて10 分くらいのところにあるホテルニュータガワ、そこで開かれた高校の同窓会にぼくは参加していました。
楽しく過ごしてたんですが、途中ちょっと飲み過ぎて気分が悪くなったんでトイレにいったんですね。
 
それで用を済ませて手を洗っていたら、後ろの個室から獣のような低いうめき声が聞こえるんです。
人間とは思えないような声でちょっと怖かったんですが、とりあえずその個室をノックして「大丈夫ですかー」なんて声をかけたんです。
でも返って来るのはうめき声だけ。
 
これは困ったな、ホテルの人を呼ぼうかな、なんて考えていたら、だんだんうめき声が大きくなってきたんですね。それでもう気味悪くなっちゃって、トイレを出ようと身体の向きを変えた瞬間、
 
ドタン!
 
と個室の扉があいたんです。もうその音にドキッとしちゃって、さらにさっきのうめき声もまだ聞こえるんですね。
それだけじゃなくて、なんか、
 
ピチャピチャピチャピチャ…ピチャピチャピチャピチャ…
 
なんて、何か水の音も聞こえるんです。なんか怖くて身体がかたまって動けな くなっちゃって。
 
でも、もしかしたら具合が悪くて、そんな声が出てるのかもしれない。
そうも思うんですね。
 
で、たぶん2 〜3 分くらいはそんな感じで、でもこのまま固まってるわけにもいかないってんで、意を決して振り向いたんです。
 
そしたら、何がいたと思います…
 
ゾンビです
 
青白い顔の男が痙攣しながら、ウーウーうめいてるんです。
目玉の色は浅黒くて、瞳孔はきゅっと閉まっている。
死んでるみたいなのにビクビク動いてるんです。
 
でね、よく見ると、上はスーツなんですけど、下、履いてないんです。
 
そこでぼく、気づいたんです。
さっきのピチャピチャピチャって音、ウォシュレットの音だったんです。
 
ゾンビがウォシュレットされながら、ウーウーうめいてるんです!
 
もう唖然として動けないですよね。
でもぼくはジャーナリスト稼業やってますから、これは撮っとかなきゃなと、
もうそれは本能ですよ。そーっとスマホを取り出して録画を始めたんです。
 
しばらくはそのままだったんです。
いつ切り上げようかな、なんて考えてたら、そいつが バッ と顔を上げて、こっちを見てきたんです。
 
あ、これはヤバいな、そう思った次の瞬間、
 
ガタガタガタガタ!
 
ヤツが立ち上がって襲ってきたんです。
お尻にこんな感じで手をやり、その手をぼくに向けて振り上げてきました。
(と、お尻の割れ目に手を当てて、大きく振り上げる)
 
それを見たぼくはもう一目散、トイレを出て、ホテルを出て、駅まで走って新幹線に乗りました。
 
(怪談風の語り口はここで終わる)
 
これが始めての遭遇でした。
それからは日本全国、いろんなところに行って話を聞いて回りました。それでわかったことは、
「ウォシュレットとシャワートイレは危険だ」
ということです
 
(客席をぐるりと見回して、お客さんの顔を眺める)
 
…もうちょっときちんと説明したほうがいいですね。
 
あの病気なんですが、感染の発信源はさきほどの福岡県北九州市ともう1つあったんです。それは、愛知県常滑市です。
 
さて、北九州市と常滑市には何があるのか。
 
北九州にはTOTO、常滑にはINAX があるんです。
北九州はウォシュレット、常滑はシャワートイレなんです。
 
(再び客席をぐるりと見回して、お客さんの顔を眺める)
 
…さっきのゾンビのことを思い出してください。
ゾンビはウォシュレットされながら、ウーウーうめいてたんです。
わかりますか。そう、
 
この病気はアナルから感染するんです!
 
常滑に取材に行ったときに目の当たりにしたんですが、ゾンビに襲われた人がゾンビ化する様はひどいもんです。
 
どうなると思います?
 
たくさんのゾンビに飛びかかられて身動きがとれなくなって、
まず下を脱がされるんです。こう(とズボンを脱ぐジェスチャーをする)
その後が悲惨です。
 
尻の穴に指を入れられるんです。ゾンビに
 
もうそうなるとおしまい。5 分後くらいにカラダ中がが痙攣しはじめて、ハイ、ゾンビの出来上がり。
 
そう、この病気は尻の穴から感染するんです。
 
この病気、政府・厚生労働省ももうお手上げってな具合に広がってしまってますが、実は政府、そしてTOTO、INAX は重大な真実を隠しているんです。
 
ぼくが全国の取材でつかんだ真実、もともとこのゾンビ病原体、自然界に存在するものじゃないんです。つまり生物兵器なんです。
 
INAX がTOTO をつぶすために作った兵器なんです。
 
それがTOTO の本拠地たる北九州市のウォシュレットにしかけられたのが、はじまりだったんです。TOTO も対抗して、同じ病原体を改良してINAX のシャ ワートイレにしかけた。そうやって感染が広まっていきました。
 
でもね、ここでお互い誤算が生じたんです。
当然、自分たちがつくった兵器なんで、ワクチンを持ってたんですけど、互いがつくった病原体がかけあわさっちゃって、新種が生まれたんです。
実は今、感染が広まっているのはこの新種なんです。
 
そしてこの新種、ワクチンが効かないんです。
 
ワクチンが効かない、つまり防ぐ手だてが無いんで、政府、厚生労働省もお手上げです。そんな状況ですから、日本はもうおしまいです。
 
けどね、こんな状況を救えるのが大阪なんです。
 
かつて大大阪(だいおおさか)と呼ばれ、栄華を誇った大阪の力を見せるときなんです。みなさん大阪には何がありますか。
 
大阪にはパナソニックが、そしてビューティトワレがあるんです!
 
パナソニックといえば「ナノイー」です。
「ナノイー」っていうのは、空気中の水分から生みだされる微粒子イオンでして、菌やウイルスを抑制する力があるんですね。
 
そう、この「ナノイー」こそが鍵なんです。
「ナノイー」はゾンビ病原体に効果があるんです。
 
「ナノイー発生ユニット」はエアコンとか洗濯機とかいろんなものに搭載されているんですが、当然、パナソニックのビューティトワレにも搭載されています。
もしお尻が病原体に侵されても、発症するまでにビューティトワレでお尻を洗浄する事で、発症を防ぐ事ができます。
 
つまり、ビューティトワレが日本を救う鍵なんです。
大阪の、パナソニックの、ビューティトワレが日本を救うんです!
 
みなさん、ウォシュレットとシャワートイレを見たら、即座に破壊してください。もちろん、ビューティトワレであればそのままです。
 
ただ、問題なのはどこにでもビューティトワレはあるわけではないということです。
もはやゾンビはトイレを飛び出し、日本中に生息しています。どこにいてもヤツらの尻の穴から病原体を移されてしまう。
近くにビューティトワレがなければ、それでおしまい。
 
でもね、思い出してください。パナソニックには美容家電の草分けです。その美容家電のノウハウから生まれたすばらしい製品があります。
 
(とアタッシュケースからなにかを取り出す)
 
そう、ハンディトワレです。
(ケースから取り出したハンディトワレを客席に向けて高くかざす)
 
このハンディトワレがあれば、どこでもお尻を洗浄する事ができます。つまり、これさえあればゾンビなんてこわくありません。ハンディトワレが日本中に行き渡れば、この危機を脱する事ができるはずです。
 
みなさんの、大阪の力でハンディトワレを全国に広めましょう。
ハンディトワレ革命です!
 
大阪は古くから「天下の台所」と呼ばれ、商人の力、つまり民衆の力で発展してきました。
大阪のみなさんにはそれだけのパワーがあるということです。
大阪の力でハンディトワレ革命を成し遂げましょう。
 
ハンディトワレを片手に一緒に戦いましょう!
ここにいるみなさんが世界を救う先触れとなるのです。
 
最初は小さな力かもしれません。ぼくもそうでした。ぼくの話を聞いてくれる人なんて全くいなかったんです。
でも、希望を信じて活動をつづけていたら、今日のように、たくさんの人が話を聞いてくれるようになりました。
 
みなさんが希望を、大阪の力を信じて活動すれば、ハンディトワレ革命は必ず成し遂げられます。
 
大阪のみなさん、今こそ立ち上がりましょう!
大阪が世界を救うのです!
 
No TOTO,  No INAX
No ウォシュレット, No シャワートイレ
 
Yes パナソニック! Yes ハンディトワレ!
Yes パナソニック! Yes ハンディトワレ!
 
(暗転)
 
(しばらくして照明がつく)
 
(木下が手を後ろに組み、立っている)
(木下、お辞儀をする)
 
(終演だと勘違いした観客から拍手が出るのを待つ)
(※ もし、少し待って拍手が出なければ、そのまま進める)
 
(拍手が出たら、顔を上げて後ろの椅子に座る)
 
ぼくのせいでこんなことになってしまいました。
みなさんが今座っているのは、ビューティトワレではありません。
ウォシュレットです!
 
(複数のウォシュレットが一斉に放水する音)
(木下は悲痛な叫びをあげる)
(木下の叫び声は低くなっていき、次第にゾンビ特有の低い獣のような、それでいて物悲しい叫びに変わっていく)
 
(暗転)
(真っ暗な中、 叫び声が響く)
 
〈終〉

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